はじめまして、貝田(かいだ)と申します。
今日は大阪市北区にある「丸繁商店」さんをご紹介します。
大阪の駄菓子屋・丸繁商店が放つ都会の喧騒を忘れる魅力
駄菓子屋さんがある中津商店街は大阪駅から徒歩圏内であるにもかかわらず、どことなく昭和にタイムスリップしたかのようなレトロな空間。
天井の幌は破れ、シャッターを閉めている店舗が多い中で、その駄菓子屋さん・丸繁商店はいつもと変わらない陳列で今日もお店を開けていました。
「これは、区役所の取材のときのやつやわ」
そう言って店主の福本道子さんが見せてくれたのは、大阪市北区が発行している広報誌。
先代から引き継いだお店であること、福本さんの代になって60年以上経つこと、寡黙で実直な性格だったご主人とのこと。
見開き2ページのロングインタビューでした。
「もうずいぶん前やで、10年は前とちがうかな」
と謙遜されていましたが、表紙を見ると去年の4月号との文字が。
「あれ、去年? いろんなところからしょっちゅう来るから、
わからんようになってしまったわ」
10年前も去年も大して変わらない。このおおらかさが人気の秘訣かもしれません。
取材が多いのは本当のことらしく、大手出版社のタウン誌や地域のフリーペーパーを見て写真を撮影しに来たり、懐かしがって駄菓子を買っていったりする大人のお客さんもいるとのこと。
そういえばお話を聞かせていただいているあいだも、偶然お店の前を通りかかったカップルが駄菓子の前からしばし動けなくなっていました。
雑誌か何かで情報を得たのかもしれませんね。
やってくる子どもたちに、惜しみないオマケ
丸繁商店がある付近は保育園や小学校があり、夕方になると子ども達の笑い声が聞こえてくる地域。
きっとお店もお忙しいに違いないと思って尋ねたら
福本さん「そんなことないよ。子どもらが帰ってくる前には閉めてしまうからね」
貝田「え、そうなんですか」
福本さん「学校行くときに『今日あけといてな』って言われたら待ってるよ」
そのため、日が暮れる時分までお店を開けていると、事情を知らない地域の顔なじみから
「どうしたん」
と驚かれるそう。
「子どもたちにはついついオマケしてしまうしね。そんなんやから、ほんま儲からんよ。よう言われるもん、そんな店のもんポンポンあげてたら世話ないって」
近所のツッコミにも目尻を下げる福本さん。
かく言う自分もお話を聞かせていただいた帰りに、アイスクリームサーバーの中で凍らせたゼリーをいただきました。
「子どもらは、お金使わんでええねん。ここらの安いやつでも、ぜんぶクジ付きやから。
当たる子は当たるからね」
お店の外の台に陳列するのが駄菓子屋・丸繁商店のスタイル。
10円〜30円の駄菓子を豊富に取り揃えているのはそういう理由があるんだそうです。
いつまでも来てくれる人がいるから、いつまでも開けておきたい
お店がある大阪の中津商店街は最盛期には54店舗が軒を連ね、駄菓子屋だけでも丸繁商店以外に3軒、
ほかにも肉屋、寿司屋など、生活必需品はすべて商店街の中で揃えることができたそうです。
それでも「今は、何ひとつ揃わんけどね」と笑う福本さんからは微塵も暗さを感じません。
そこには老舗ならではのやりがいがあるようで、今まで閉めようと思ったことはありませんかと尋ねたら、
「今、東大に行ってる子がおるんやけど、夏休みには帰ってきて顔出してくれるんよ。背も見るたびに大きなってね。今、よう来てくれる小さい子らも、そうやって大きなってからも来てくれたらええなと思ってるねん」
と嬉しそうに語ってくれました。
賑やかだった頃の活気が、いつかまた戻ってくるように
「当たりが出たら、持ってきてね」
そう言って店先で見送ってくださった福本さん。
シャッターが閉まった近隣の店舗を見つめるその目には、活気の戻った商店街の姿が浮かんでいるように感じました。
クジ付きの駄菓子や、変わらないお店のたたずまいに、何度でも来たくなる魅力がたくさん詰まった大阪の駄菓子屋・丸繁商店。
ぜひ一度、足を運んでみてくださいね。
【丸繁商店】
*住所:大阪府大阪市北区中津3丁目18-17
*営業時間:11時〜15時
*連絡先:06-6371-5483
*定休日:日曜
今も昔も変わらない駄菓子屋さん。令和も元気に続けてほしいわ!
貝田孝一
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