まずおどろくのが、お店に貼られた圧倒的なポップの数。
「あいさつをしよう」「いつもありがとう」など、思ったことがそのまま手書きで書かれてあります。
引き戸を引いて中に入ると今度は写真。
大森商店は店主の大森さんとお客さん、みんなの想いが詰まった駄菓子屋さんでした。
大森さんと子どもたちで作り上げた空間
「子どもたちは本当にクジが好き『もう一個当たった』『なんぼ当たった』とかって盛り上がんのよ」
体力的にツラい時もあるけれど、当たりを持ってくる子がいるからお店はなかなか辞められないと嬉しそうに語る大森さん。
1円玉10枚でもいい。子どもたちには「1円玉をバカにしたらあかんよ」と教えているんだそうです。
大森商店は、大森さんのご両親が昭和43年にタバコとパンからスタートしたお店。
昭和53年には大森さんご夫婦も脱サラ。
お店を拡張して「子どもたちが好きだから」とその頃から駄菓子を置きはじめたんだそうです。
店内にたくさん貼られた子どもたちの写真は、その頃からのもの。
今では立派な社会人になっている方もたくさんいるそうです。
ご自身の結婚式の時にここで撮った写真やお店の風景を動画で流すカップルもいらっしゃるとか。
今小学生や中学生で駄菓子を買いに来る子どもたちにも、そういう時期が来ると思うと体力の続く限り続けていきたいと大森さんは言います。
叱ってやるべきところを見逃さない
「昔は結構なワルもいたよ。でも私も負けないからさ」
原因は万引き。
お店のいちばん奥、死角になっているところの鏡はそのためなんだそうです。
万引きに失敗した子は今でも怒られた思い出を笑って話す。
昔は駄菓子屋は社会性を学ぶ場でもありました。
今でもこんなお店が残っていることに嬉しくなってしまいます。
「時代が流れて環境は変わっても、子どもたちは本質的には変わってないもんだよ」
今の子は何でも画面越しで向き合った会話が少ないのはかわいそうだと思う、と大森さんは言います。
親もスマホを見てる。子どもは何かを話したくても、訴えたくても、聞いてもらえない。
だからここに足を運ぶのではないかと。
なるほど、そう考えると確かに、昔も今も心の底ではリアルなコミュニケーションを求めているのかもしれませんね。
「だから話は聞いてあげてる。疲れるけどね(笑)」
大森さんは現在、77歳。
子どもたちのエネルギーに圧倒されることもあるそうです。
受け継がれる駄菓子屋・大森商店の訓え
町内会のお祭りの際のセット菓子や、児童ホームのおやつとして納品している駄菓子も承っているとのこと。
先日あった夏祭りではセット菓子を400個も作ったんだとか。
「駄菓子のメーカー自体が高齢で潰れていくことも増えてきて。最近は輸入物もあるよ、ほら」
見せてもらった駄菓子の札には値段とともに、原産国や製造国が書かれているものも。
韓国、フィリピン、中国、スペイン……。
添加物や保存料のこともあり、親から言われている子は買う時にちゃんとどこで作られているか確認するそうです。
「こうやって勉強のために書いたり、貼ったりしてるから、私のこと『先生』って間違って言っちゃう子もいてね」
店内には注意書きもたくさんあります。
「買わないものはさわらないで」
「万引きはダメぜったい」
小さい頃そうやって教えられたり、叱られたりした子は、親になり子どもと一緒に来ても「触っちゃダメよ」と必ず言うそうです。
確かに、小さいときに教わったことって忘れませんよね。
子どもを子ども扱いしないことの大切さ
大森さんは子どもを決して甘やかしたり、決めつけたりすることなく、大人のお客さんと同じように接していました。
確かにそうかもしれません。
子どもに人気のある大人って自分を対等に扱ってくれる人でしたよね。
最後に駄菓子をいくつか購入。なかでも目を引いたのは「うまい棒 レモン味」。
「これ、なかなかないやつだから」
大森さんが勧めてくれた一品は、素朴な甘さの中にレモンのさわかやな酸味がとても美味しかったです。
まだまだめずらしい駄菓子がたくさんあったので、また寄らせてもらいますね!
基本情報 【大森商店】 *住所:兵庫県尼崎市武庫元町2丁目4 *営業時間:【平日】10:00~12:00 14:00~17:30 【土日】10:00~12:00 13:30~17:30 *定休日:木曜 *連絡先:06-6433-0023 |
駄菓子屋さんって大人になっても忘れない大切なことを学べるわよね。
貝田孝一
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