溶けかけた雪と柔らかな日差しが春のような陽気の12月、伺ったのは北海道・苫小牧市。
道央地方に位置し太平洋に面した人口約17万人の都市です。
旅客フェリーの発着があり千歳空港から車でおよそ30分、海と緑に囲まれ近くには乗馬体験ができるノーザンホースパークや美しい庭園のあるイコロの森。
大自然の息づかいを感じられる、知られざる観光スポットがあり、世界でも珍しい内陸式掘込港や大手製紙工場を持つ道内有数の工業都市です。
森を抜け、都市に入り道路を走るとひときわ目立つ鮮やかなオレンジ色を発見。
壁には「贈り屋」の文字がありました。
一見すると何屋さんなのか、一体中はどんなふうになっているのかと期待を込めてドアを叩くと、店内は暖かく「寒かったでしょう」と声が聞こえてきました。
ふわっと心が温まる、そんな始まりの取材でした。
お店も店主もあたたかい「贈り屋」へようこそ。
いくつになっても駄菓子屋の常連さん
店内で最初に目に付いたのは高身長ですらっとした男性のお客さん。
スターウォーズのダウンジャケットに皮の鞄、レア商品の数々に身を包むこちらの男性は32年前から通う常連さんでした。
店主のお子さんの小学校時代からの友人で「贈り屋」が駄菓子販売を始めてから今もなお通い続けているとのこと。
小さな頃から贈り屋と共に歩んできたという常連さんとの出会いから始まりました。
こんなにも長く通うお客さんがいるというのは駄菓子屋ならでは。
こうした長年の変わらない常連客にホッとなるのはお店側もお客側も同じ。
それが子どもから大人まで年齢問わずにいつの時代も人気がある所以なのかもしれません。
ベテラン常連客と店主に聞いたおすすめや北国ならではの商品をご紹介します。
定番中の定番、当たりくじ付きはいつでもどこでも大人気。
サッカーなどの当たりくじ付きは特に人気だそう。
そして殿堂入りにしても誰も文句なし、みんなのアイドルうまい棒。こちらではヤングドーナツもよく出るそう。
せっかくの北海道取材、定番も良いけど北海道出身だからこそ紹介できる一風変わったものを皆さまに知っていただきたく、今回は少し路線を変えてご紹介。
北国の人は何を買っているのだろう、と期待が高まったところで一気にいきましょう。
今では「ホタテの貝ひも」は高級品。
それが駄菓子屋にありこの価格とは驚きです。
噛むことは脳に良いそう。
今の時代「噛む」ならガムより帆立でしょう、と言っている日がいつの日か来てほしい。
そんな想像を膨らませながら探すのも駄菓子屋選びの楽しみの一つ。
北海道では帆立や海鮮好きが多いので目立つ所に「帆立たら」。
「ようかいけむり」「おばけけむり」は指に液体を塗り、つけたり離したりすると煙が出てくるという商品。
カードを1枚選び破ってみるとあら不思議という楽しい商品でしたが、ここで残念なお知らせ。2020年で製造が終了、現在流通している市場在庫をもって販売終了。
今となっては珍しい商品となってしまいました。
「いれずみシール」は水にぬらしてはがすだけで簡単にいれずみが完成するので、ちょい悪キッズになりたいあなた、これで気分を上げてみては。
「悪ガキびぃる」から一句
悪ビール 飲んで気分は ハイテンション
子供だってスカッとしたい日はあります。そんな時にはこれで気分爽快、明日も頑張ろう。
ちょい悪キッズを目指す方に第2弾。「わるガキ びぃる」と「黒ガキびぃる」。
その日の気分でちょい悪を目指すのか、いっそのことダブルでいくかどちらもお楽しみあれ。
ちょい悪キッズを目指す君へ、まだまだあります第3弾「Green apple」。
見た目はお酒のようなパッケージ、中身は青リンゴサワーというなんとも可愛らしいギャップ萌えまで狙える商品。
ちょい悪と思ったら大間違い「中身は良い子です」を狙える商品として人気、という勝手なる想像です。
こちらは人気のくじ付きで、楽しさがさらに倍増。
小学校が近くにあり、住宅街にあることから小さなお子様、ご家族、大人まで幅広い年齢の方で店内はいつも大盛況。
店主ご夫妻のお人柄もあり、お客さんが後を絶ちません。
変わりゆく駄菓子の世界
ポイントカードを貯めるための機器がレジ前にありました。
苫小牧市内では地域経済活性化策の一つとして「とまチョップポイント」があり、市内加盟店でポイントを貯めたり使ったりとポイントを循環させて市内経済の活性化を図っています。
取材途中に来店した親子が今日はポイントを貯める?使う?と話し
「端数の4円だけポイントを使います」
と話していました。
こうして時代の波に乗るやり方も取り入れているのが、贈り屋さんの特徴でもあります。
SDGs、そして全てはお客様のために
店の端には賞味期限間近のコーナーが用意されていました。
無駄を省く、食品ロスをしないというSDGsにも取り組んでいらっしゃいます。
これはお客様のためにも安く提供できるというお店側の努力でもあり、素敵な考え方ですね。
ご主人様の独特な世界観
面白いなと思うのは、駄菓子屋にはそれぞれの個性や歴史があり、店主の趣味や嗜好、時には人生をもあちらこちらに感じる時があります。
その世界観は「贈り屋」にもありました。
駄菓子を置くその片隅には数多くのフィギュア。特に目立つのがご主人の趣味のゴジラが今にも飛び出して来そうな迫力で置いてあります。
昔はガチャガチャも置いていたそうで(現在は取り扱いはなし)、その頃からフィギュアに興味を持ったご主人がゴジラ好きになり、今は「非売品」として飾っています。
広い店内には駄菓子とガラスケースに整然とならぶフィギュアは圧巻。
きちんと並んだフィギュア達はご主人の人柄がよく反映されていて、きちんと正面を見て中にはポーズを決めている者も。
ゴジラ世代の皆さま、こんなフィギュアがあったのかという懐かしさを探しに行くのはいかがでしょう。
駄菓子屋「贈り屋」店名の由来
店名には様々な思いや過去があって今がある。
こちらの由来は名前の通り、お店を始めた頃は”贈り物屋”だったからこの名がついたそう。
今では少なくなりましたがお中元やお歳暮、冠婚葬祭時には、カタログを見て贈り物を注文をしていました。
それを商売として始めたことから「贈り屋」と名前をつけたそうです。
ネット注文や電話で済ませてしまうお手軽さをつい優先してしまう時代だからこそ、お店の方に相談しながら注文をする。アナログだからこその良さも忘れてはいけない気がします。
聖地巡礼第9弾「贈り屋」は店主の趣味に溢れ、馴染み客も多い温かな場所でした。
東京に住んでいると自然が恋しいなと思う時があります。育った北海道の緑が恋しくなり地元の友人達に会いたいなと。
きっと皆さまにもそんな時があるのでは。
誰にでもある「あの頃」を思い出せる方法があるとしたら、駄菓子でも食べて空を見たらきっと心が軽くなるはず。
苫小牧の方、北海道の方は駄菓子屋巡りと合わせてドライブがてら「贈り屋」をのぞいてみてください。
帰り道に空を見上げたらきっとそれは同じ空。同じ空を見上げている地元民が今日は空がきれいだなって思ってくれるかも。
そんな風に皆さまにもあるほっとできる場所とつながれますように。
明日は今日よりも良い1日になっている。
普通の1日が少しだけ特別な、そんな1日になりますように。
【基本情報】 贈り屋 ●住所:北海道苫小牧市柏木町6-7-8 ●連絡先:0144-72-6618 ●営業時間 月〜土:14:00〜18:30(12月〜3月は14:00〜17:00) 日:14:00〜17:00 定休日:不定休 |
ゆきこ ロッシ
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