13代続く都内最古の駄菓子屋・上川口屋〜豊島区雑司が谷〜

東京都

都電荒川線沿い鬼子母神駅から歩いて鬼子母神堂の方へ向かう道。

並木通りをぬけて、ノスタルジックな雰囲気の鬼子母神堂の境内にある長屋が一軒。

看板を見ると、なんと創業1781年!

東京都では最古といわれる駄菓子屋「上川口屋」に来ました。

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全国各地、世界から取材がくる人気店

取材に行ったのは、土曜午前。たくさんのお客さんで賑わっていました。店頭に立つのは13代目の内山雅代さん。

次々来るお客さんの要望にてきぱきと対応する姿が印象的です。

商品の整理をする女性

人が多くても落ち着いて対応し、お金の計算も素早く、お釣りを渡します。

木の箱に入ったお菓子

店頭に並ぶ駄菓子の種類は全部で100種類ほど。

昔懐かしい商品から、最近の商品まで、圧巻の品揃え。

店頭に並べられたお菓子

上川口屋の建物に加え、この木箱がまた味を出しているんですよね〜。

一番左にあるのは駄菓子ではなく、グライダーのおもちゃ。駄菓子だけでなく、懐かしいおもちゃもあります。

「グライダーはとても人気で、大人の男の人が懐かしいなあなんて言って、よく買っていくんですよ」

買い物をする二人の男性

上川口屋の建物は、明治以前から変わっていないそう。

関東大震災、東京大空襲などからも奇跡的に逃れてきた長い歴史を乗り越えてきた趣を感じます。

そんな上川口屋は、ジブリ映画「おもひでぽろぽろ」のロケ地としても使われたり、度々テレビや雑誌で取り上げられたり、時には海外から取材が来ることもあるそう。

掲載された韓国の旅行本を見せていただきました!

韓国語のテキスト

「お客さんがいっぱいですね」

私がお店に着いてから10分ほど過ぎ、ようやくお客さんの波が途絶えてから、話しかけました。

取材慣れしているようで、すごく気さくにいろんなお話をしてくださりました。

戦争経験が駄菓子屋で生き抜くノウハウとなった

「駄菓子屋は決して稼げる商売ではないんですよ。昔からそうでしたが、今はさらに」

昭和の頃からお店を切り盛りしていた内山さんですが、次第にコンビニやスーパーが駄菓子屋と同じ商品を売り出したことで、以前より客足が遠のいているのが現状です。

お菓子が入ったカラフルな箱

消費税増税の影響、コンビニやスーパーが駄菓子屋と同じものをより安価で売ってしまうこと、新型コロナウィルスの影響など問題は尽きません。

そういったシビアな面を語りつつも、内山さんは今を決して悲観的には捉えていませんでした。

「戦時中、私がまだ5歳ぐらいだった頃、あまりに空腹で歩けなかったこともあります。強く耐え続けた幼少期でした。駄菓子屋は儲からない商売ですが、当時得た生き抜くためのノウハウが私にはあるから、やっていけるんです」

内山さんのご自宅にテレビはなくラジオのみだそう。

洗濯機もなく、コインランドリーを利用しているそう。

内山さんが思う「豊かさ」とは便利さではなく、お金では決して買えない人との繋がりだと言います

10歳の頃から駄菓子屋を手伝い、70年近く店を続けられている何よりの理由です。

お客さんとの出会いが何よりの豊かさ

上川口屋には、老若男女問わず、常連さんから通りすがりの人まで、さまざまなお客さんが訪れます。

親子連れ、昔を懐かしむご年配の方、20〜30代の方と年齢層は幅広い。

「お堂が近くにあるから、いつも来ていた小さい子どもが、成人式のお宮参りの時に成長した姿でここに挨拶に来たり、御産の時には、母になりました!って赤ん坊連れてきたりね。お会計でお釣りを渡すと『儲かった!』なんて言っていたぐらい小さい子がいつのまにか成長していく姿を見られると、続けてきて良かったと思いますね」

店のイラストが描かれたポストカード

こちらはイラストレーターの常連の方が描いた上川口屋の絵。

たくさんのお客さんとの出会いがあるんだなと実感しました。

子どもと接する女性

「外国人観光客の方もよく来ます。時に駄菓子をよく思わない人も来ます。出会ってきたお客さんは年齢も国籍も考え方も多様で、毎日どんな出会いがあるかなと思うと楽しい商売ですね」

お客さんとの関係が深まるから。
お客さんが毎日違うから。

さまざまな出会いを経験された内山さんはお話の引き出しや知識がとにかく豊富でした。

お客さんから得た情報から近年の経済や社会情勢についても大変お詳しい。

かれこれ話が弾み、気づくと2時間半!

最後に駄菓子を購入すると、「はい、取材のお礼に。これはおまけね!」と、追加で駄菓子を頂きました。

取材は途中接客をしながらも、きちんと私に付き合ってくださり、最後におまけまで下さり……本当に感謝です。

串に刺されたイカ

最後に購入した駄菓子。味付けされたイカはおつまみのようで噛めば噛むほど美味しい〜!

テーブルに置かれたお菓子とおもちゃ

持ち帰り分の駄菓子。内山さんから頂いたおまけも含まれています。

大人にも人気なソフトグライダーも気になり、つい買ってしまいました!

内山さんから学んだ 「お金には変えがたい豊かさ」とは

買い物をする子どもたちと接客をする女性

人情溢れる昭和の象徴であった駄菓子屋。

上川口屋の魅力は、長い歴史や豊富な品揃えに加え、内山さんが一人ひとりのお客さんとの出会いを大切に、丁寧に商売をする姿にありました。

初めてのお客さんとも常連さんとも、誰とでも気さくに話し、内山さん自身も心から楽しんで商売をされていました。

コンビニ店で駄菓子・お菓子を安く買うことができても、便利さを求めて生活しても、決して得られない「豊かさ」が上川口屋にはある。

そう確信しました。

人との繋がりがあるから、便利さを必要以上に求めなくても豊かな心を持って日々過ごすことができる。

「働く」とは、「豊かさ」とは、何だろうか。考えさせられた取材でした。

【店舗情報】
店名:上川口屋
住所:〒171-0032 東京都豊島区雑司が谷3丁目15-20
営業時間:10時〜17時
定休日:雨天の日

お店の雰囲気から店主さんまで、とにかく魅力に溢れているわね!これからも元気に続けてほしいわ!

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まなえもん

まなえもん

いつまでも子ども心を忘れずにいることがモットー。ワクワクを見逃さないライター。好きな遊びは鬼ごっこ、泥遊び。「ドラえもん」や「ALWAYS三丁目の夕日」から昭和レトロにハマりだした平成8年生まれ。銭湯も好き。思い出の駄菓子は当たりつきのきなこ棒。
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