駄菓子屋さんには、駄菓子の他にも色々なものが置いてある。
タバコ屋さんを兼ねていたり、旨いタコ焼きがあったり。
そんな中、駄菓子屋さんならではの“おもちゃ”というのも、実は結構好きで。
というわけで、今回は駄菓子屋さんにある楽しいおもちゃを紹介したいと思います! いくよー!
こちら今回の主役。
指ばっちんガム。(正式名称:ドッキリ痛ガム)
(正式名称は「ドッキリ痛ガム」とのことですが、
私の中でこれはあまりにも「指ばっちんガム」なので、便宜上ここではそう呼ばせてほしい。)
「ガム食べない?」と差し出され
「おお、ありがとう」と素直に受け取ると
たちまち指がバチンと痛い目にあう、ってゆー、アレ。
シンプル且つ古典的な手法でありながら、タイミングかえ人をかえ、今日も世界のどこかで誰かが指ばっちんされている。
指ばっちんガムの思い出
昔々、年の離れた姉がガムをくれるというたびにワァーイと喜んでは
これで指をばちんとやられていた私。
人を疑う心が微塵もない素直なよい子の私は何度でもひっかかり、そのたびに痛みと悔しさ、欺かれた悲しさで幼い胸を痛めていた。(かわいそう)
あのこと、彼女はどう思っていたのだろうか。
ひどいと思わなかったの?
あんなことして私がよろこんでいると思ったの?
姉の回答はこうである。
「ひどいと思ったよ。でも、いやがりながらもよろこぶ姿が可愛くて」
多分姉は私をおもちゃだと思ってたのだろう。
おもちゃでもってさらにおもちゃで遊ぶという二重の贅沢。
おもしろいのは姉だけ。
蘇る指パッチンガム(ドッキリ痛ガム)の記憶、そして…
目前の指ばっちんガムに睨みをきかし、かつての恨みがふつふつと思い出される昼下がりの駄菓子屋。
指ばっちんガムは、人を疑うということを知らない無垢で素直な者を基本ターゲットとしている。
これはゆゆしき事態ではないだろうか。こんな正直者いじめを助長するようなものが市民権を得て、飄々と駄菓子屋にある事実に愕然とする。
それでも、と、私は考える。
(10なん年の時を経て、今こそ姉にリベンジを果たす時ではないか・・・・?)
その考えは私の中に取り憑き、悪いことと知りながらもいつしかそれは実行に移さずにはいられぬ衝動となった。
いざ、リベンジへ
今私はどう思われているだろう。
指ばっちんガムの様子をチラチラ伺いながら、落ち着きなく店内をうろつく。
どんな顔をしてこれを持っていくというのか。
この商品は「これから誰かをばっちんしますよ〜」と堂々宣言しているようなもの。
まさかプレゼント用で、などとも言えないし。
いじめっこだと思われたらどうしよう。目は泳ぎ、オドオドと不自然に店内をうろつく。
ああもうなんでもいい!とにかくここは照れたりする方が逆に恥ずかしいんだ(たぶん)!
照れるべからず。
背筋を伸ばし、毅然とした態度で。
ガムをひとつ、べりりと剥がす。
そのまま流れるような所作で、すっとレジへ。
むろん他の物品の下にごまかしたりしない。
手練れバイヤーのごとき風格でもって、「指ばっちんガム」を買う。
今ここで私は紛れもなく「指ばっちんガムを買いに来た人」である。
そう!私はこれから!何も知らない弱き者に指ばっちんをするのです!!!!
〜後編へ続く〜
手塚 みつ子
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