子どもの頃に、初めて手に取った本は「絵本」ではないでしょうか。
かわいい絵、怖い絵、おしゃれな絵。
大きな絵で主人公が活躍する絵本は、人が最初に出会う教科書なのかもしれません。
昔読んだ絵本でも、大人になってから読み返してみると深い意味に気づいたり、当時とは違った見方ができたりします。
この記事では私が実際に読んでいた絵本の中から、有名なもので且つ印象に残ったものを中心に5冊、ご紹介します。
図書館や古本屋で見かけることもあるので、お子さんがいる方に限らず、ぜひ読んでみてください。
モチモチの木
おじいさんと暮らしている豆太は、5歳になっても夜に一人でおしっこに行けないほどの臆病な子。
特に家の前にある「モチモチの木」と名付けた木を恐れていました。
ある日の夜、おじいさんが腹痛で苦しみだしたのに気付いた豆太は、2キロほど離れた村まで医者を呼びにいくことに。
そして豆太が勇気を振り絞った甲斐もあり、おじいさんは無事に助かります。
すると、そんな豆太を祝福するようにモチモチの木が明るくなり、勇気のある者がだけが見られる「山の神様の祭り」が始まります。
おじいさんの腹痛も治り、いつもの日常が戻ってくると豆太は、また一人ではおしっこに行けない子に戻ってしまいました。
モチモチの木の見どころ
まず注目したいのは、ストーリー以前にその挿絵。
黒をベースに切り絵で表現されたモチモチの木は、闇に浮かぶ大木、という圧倒的な迫力があります。
豆太でなくても、思わず怖くなってしまいます。
そんなモノクロをベースとした世界だからこそ、モチモチの木が明るくなり「山の神様の祭り」が始まったシーンが引き立ちます。
巨大な木が、様々な色の明かりに包まれるシーンは、ストーリー的にもイラスト的にも、最大の見どころです。
となりのせきのますだくん
小学1年生のみほちゃんは、学校に行くのが憂鬱で仕方がありません。
なぜなら、となりのせきのますだ君が、なにかといじわるをしてくるから。
鉛筆で机に線を書いて「ここからでたら、ぶつからな」と言ったり、算数が苦手なことをばかにしたり……。
(ちなみに、その線はみほちゃんの机を半分くらいは占領しています。)
ある日、ますだ君とみほちゃんがケンカをします。
今までは、嫌がらせに耐えていたみほちゃんですが、お気に入りの鉛筆を折られたことで、消しゴムを投げて、それがますだ君にぶつかります。
「きっと、学校に行ったらぶたれる」
そう思って学校にいったみほちゃんは、ますだ君に「ごめんよ」といって、やっぱりぶたれます。
ただ、それだけではなく、ますだ君はテープを巻いて直した鉛筆を差し出すのでした。
となりのせきのますだくんの見どころ
小学校低学年の微妙な子どもの気持ちを、絵本で表現しているのが見どころです。
気になる人への表現が、不器用な形でしか表すことのできない怪獣姿のますだ君。
物語の最後で、ますだ君のことを許す、みほちゃん。
そんな、子どもの心の変化が一冊の絵本にまとめられています。
特に注目したいのが、最後の1ページでますだ君が怪獣の姿から、人間の男の子として描かれているところ。
みほちゃんからは、怪獣に見えていたますだ君が、はじめて同じ人間として見られるようになったことを印象付けるページです。
ちびくろサンボ
サンボは両親からプレゼントしてもらった服と靴、お気に入りの傘をもって散歩に出かけます。
しかし歩いている内にトラに出会ってしまい、自分を食べない代わりに服を差し出します。
そして、トラに出会うたびに、身に着けているものを取られてしまいます。
サンボは、次はいよいよ自分が食べられるのかと思いますが、トラ達はサンボから取り上げたものを自慢しあって、誰が1番立派かケンカを始めてします。
木の周りをぐるぐる回ってケンカしているうちに、溶けてバターになってしまい、最後はサンボと両親が、ホットケーキとして食べてしまいます。
ちびくろサンボの見どころ
人種差別を助長する本として、一時期は流通していませんでしたが、今では普通に購入することができます。
見どころはトラ達が溶けてバターになり、それを使ったホットケーキを焼くシーン。
トラが溶けてバターになるのも衝撃的ですが、そのバターをたっぷり使ったホットケーキは絵本グルメの中でもトップクラスの「映え」を誇ります。
ふんわり焼いたホットケーキは美味しいですが、トラが溶けたバターが凄すぎるのか、サンボは169枚もホットケーキを食べます。
いくらなんでも、そんなには食べないだろうと思うかもしれませんが絵本には「169」という数字と、サンボより高く積まれたホットケーキのタワーが描かれています。
ちびくろサンボを読んでもらったあとは、必ずホットケーキが食べたくなったものです。
すてきな三にんぐみ
黒いマントに帽子を被った三人組の泥棒たち。
それぞれラッパ銃、こしょう吹きつけ、大きな斧を使って馬車を襲い、宝物を奪っています。
ある日、いつものように馬車を襲っているとお宝の代わりに、女の子が一人だけ乗っていました。
いじわるなおばさんのところに行く途中だったティファニーちゃんに、泥棒のおじさん達の方がおもしろそう、と言われ三人組はその子を隠れ家まで連れて帰ります。
翌日、ティファニーちゃんが宝の山を見て「これ、どうするの?」と言ったことで、三人組は困り果てます。
宝を奪っても、どうするつもりも無かったからです。
そこで、三人組は捨て子や孤児を集めて、お城を買いました。
いつしか、そのお城の周りは町になり、人々は素敵な三人組を忘れない為に、そっくりな塔を建てました。
すてきな三にんぐみの見どころ
表紙は黒と紺色の、ほぼ2色しかみえないので、一見すると怖い絵本に見えてしまいます。
しかし、中盤から登場するティファニーちゃんが、その雰囲気を一気に変えてくれます。
ストーリーの前半と後半で話の雰囲気がガラリと変わるところが注目したいポイント。
登場するページは少ないですが、ティファニーちゃんが重要な役割を果たしてくれます。
ティファニーちゃん自身も、一人でいじわるなおばさんの所に住む予定だった、となにやら「事情」がありそう。
お城を建てたり、住んだりする話はありますが「お城をお金で買う」展開はあまり見かけません。
ストーリーも含めて、普通の絵本には見られない、王道を外れたちょっと珍しい展開が多いのがすてきな三にんぐみの魅力です。
ぞくぞく村のミイラのラムさん
魔女や狼男が住んでいるぞくぞく村。
そんな村に住んでいるミイラ男のラムさんはお風呂に入るのが大好きです。
ただ、唯一の難点はお風呂に入るためには、包帯をほどかなければいけないこと。
そして、お風呂上りには当然、もう一度包帯を巻かなければなりません。
四苦八苦して元通りになったものの、今度は妻のマミさんが太ってしまった為に、体に巻く包帯が足らなくなってしまいました。
ラムさんは愛する妻の為に町へ包帯を買いに出かけます。
苦労して買った包帯ですが、休憩したカフェテリアにうっかり置き忘れてきてしまいます。
急いで戻ったものの、包帯はありません。
町中を探し回り、なんとか元通りの長さの包帯を取り戻すものの、白ではなく様々な色に染まってしまっています。
しかたなく、その包帯を妻に渡すと、色とりどりの包帯が可愛い、と逆に喜んでもらうことができました。
ぞくぞく村のミイラのラムさんの見どころ
オバケが登場する絵本で、それぞれの特徴を自然に出しながら、ストーリーが展開してくのが特徴。
ミイラ男でもお風呂に入るという意外な展開と、その為には包帯は取らなきゃいけないという意外に現実的な部分がマッチしていて思わず笑ってしまいます。
さらに妻が太ったので体に巻く包帯が足らなくなってしまった、というのもミイラらしからぬエピソード。
オバケとは言え元は人間なので、そういった人間らしい部分がストーリーの中心になっており、かわいらしい絵と合わせて気軽に読むことができます。
懐かしい絵本は気軽に楽しめるタイムマシン
今でも手に入りやすいものを中心に、懐かしい絵本をご紹介してきました。
始めて見たときは読んでもらう立場だったかもしれませんが、子どもがいる方はぜひ読んであげて下さい。
読んであげることで懐かしい気持ちになりながら、自分も子どもの気持ちに少しだけなれるかもしれません。
箱根ヶ崎
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