80年・90年に流行った懐かしい少女漫画3選

レトロコラム

ふと思い出すと懐かしくなって読みたくなる、そんな少女漫画はありませんか。

好きで全巻集めた漫画。

友人にすすめられて読んで、新しい世界を知った漫画。

タイトルを思い出すだけで、その時の感動や光景がふわっとよみがえってきます。

そこで今回は、80年・90年代に流行った懐かしい少女漫画を紹介します。

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懐かしい少女漫画1. 星の瞳のシルエット(作者:柊あおい)

『星の瞳のシルエット』は、少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で1985年12月号から1989年5月号にかけ連載された少女漫画です。

とても人気があったため、メインキャラクターたちの高校卒業後を描いた「ENGAGEシリーズ」も誕生。

2018年には『星の瞳のシルエット』の20年後『星屑セレナーデ 星の瞳のシルエット another story』が生まれるほど根強い人気があります

一言でいうと地味にハマる、ピュアな恋愛漫画です。

夏野久万
夏野久万

本当にイライラするし、じれったいし、好き同士ならつき合っちゃえばいいじゃない! と思うのですが、先が気になってつい読み進めてしまうのです。

入り乱れるそれぞれの想い

主人公は中学2年生の沢渡香澄。

幼い頃、すすき野原で出逢った少年からもらった「シリウスの星のかけら」を大切にしている女の子です。

彼女はさっぱり系でショートカットが似合う泉沙樹と、やさしくて控え目な森下真理子ととても仲良し。

しかし香澄は、真理子の好きな人である久住智史を好きになってしまうのです。

しかも久住は、沙樹と幼馴染でプレイボーイの白石司と大の仲良し。

何だかんだと女子3人組と、久住・白石は交流していくように。

そんな時に香澄の初恋の少年「星のかけらの男の子」から「星がたり」という曲と共にラジオでメッセージが流れてきて……。

というロマンチックな側面もある物語です。

読者をやきもきさせる一人ひとりのキャラ

この物語の核となるのは「友情と愛情」。

友人と同じ人を好きになったり、なられたりした経験を持つ人は少なくないでしょう

だからこそ共感して、物語の中にどっぷりと浸かってしまうのだと思います。

とくに香澄と真理子のどちらがかわいそうか、共感が持てるか論争は、読む年齢によって変わってくる気がします。

私が読んだ当初はまだ幼かったためか、真理子が邪魔で仕方なかったものです。

真理子さえいなければ、香澄は幸せになれるのに! と真理子に遠慮して久住と距離を置こうとする香澄がじれったくて仕方なかったです。

しかし今読むと、真理子の気持ちも本当によく分かるんですよね。

真理子は真っすぐに人を好きになっただけ。

それなのに香澄が久住と仲良くなっていく。

でも香澄は何も自分に言ってくれない。そういうのってツライです。

現実社会でいうと、香澄はかなり嫌われるタイプかもしれません。

しかし香澄は香澄でたくさんダメなところもあって、本当に真理子のことも大切に考えていて憎めないんですよね。

その葛藤が上手に表現されている点が、この漫画の魅力というところでしょうか。

またキャラクターも奇をてらっていない、どこにでもいそうな、それでいて味のある登場人物ばかり。

とくに白石と沙樹はいい味だしています。

ふたりのやり取りは夫婦漫才のようです。

しかしこの2人も学年が上がるにつれ、関係性が変わっていきます。

単なるチャラ男キャラだった白石が目標を見つけて、真面目な顔も見せるようになるのです。

それを受け入れられず、空回りする沙樹。

いつも元気だった彼女が哀しそうな表情を浮かべる姿は読んでいてつらかったです。

戦隊モノなどではないので、とくに決め台詞的なモノはありませんが、すてきな言葉が本当に「星のかけら」のようにきらきらと溢れている作品でしたね。

懐かしい少女漫画2. POPS(作者:いくえみ綾)

いくえみ綾の作品といえば、2013年岡田将生・長澤まさみ主演で映画化された『潔く柔く』や、2017年に波瑠主演でドラマ化された『あなたのことはそれほど』などが有名ですが、『POPS』はいくえみ綾作品の中でも名作の一つに数えられるでしょう。

忘れられない過去

高校2年生の主人公原田薬子は同じクラスになった女たらしの三島岳士が気になるように。

ふたりはつき合うのですが、彼には忘れられない女性がいました。

その人は、三島の親友・清水湖太郎(通称湖太)と中学時代に取り合ったという女性だったのです。

読者の心揺さぶるいくえみ男子の存在

いくえみ綾の描く男子は「いくえみ男子」という言葉が生まれるくらい女性に人気です。

三島にキュンとした女性は多く、私もその中のひとりでした。

その彼を一途に思う薬子の強さと脆さのバランスが、片思い女子や付き合っているのに上手くいかない女性の心をつかむのでしょう

同時に湖太の存在も大きいです。

終盤まで湖太はずっと薬子の気持ちに寄り添って、気に掛けてくれていました。

でも最後のほうで、気に掛けてはいるけれど、だんだんと違う世界がでてくるのです。

そのことが薬子の心を、変えていきます。

私はそのシーンがモヤモヤしてつらかったのを覚えています。

人との関わりは、ずっと同じようには進みません

ベストだと感じていた関係性も、年月とともに、だんだんと変化していきます

それは仕方ないのかもしれないけれど、せつなくて心がざわつきました。

『星の瞳のシルエット』同様、恋愛ものなのでキメ台詞などはありませんが、いくえみ綾独特のセリフ運びがとても効果的に出ている作品です。

夏野久万
夏野久万

三島のある意味残酷な言葉がザクザク刺さります。でもそれがまた作品の魅力なんですよね。

懐かしい少女漫画3. 『ミルキーウェイ』他ジャック&エレナシリーズ(作者:清水玲子)

『ミルキーウェイ』は、ジャックとエレナという人間型アンドロイドが出てくるSF物です。

これまで紹介した作品とは違うタイプの少女漫画といえます。

こちらは友人がすすめてくれた作品なのですが、その美しい絵と独特の世界観にすっかり魅了されてしまいました。

私のような読者は多いようで、ジャックとエレナが出てくる作品はシリーズ化されています。

『ミルキーウェイ』はその第一弾(ジャック単独では『メタルと花嫁』が同作品以前につくられていますが、エレナは出ていません)。

少女漫画でSF物、しかも中性的な顔立ちの男性に見える2人(2体)が出てきて、同性愛的要素も含まれた同作品。

シリーズによっては、カニバリズム(人肉食)をテーマとしたモノもあり、少女漫画としては異質な存在といえます。

ちなみに同シリーズは『ミルキーウェイ』の他には、『ミルキーウェイ2』、『竜の眠る星』、『月下美人』、『千の夜』、『天使たちの進化論』、『22XX』、『ロボット考』などさまざまな作品があります。

どれも万能ロボットのエレナとジャックの掛け合いが面白く、とにかく美しい作品。

とくに『天使たちの進化論』は、アイコちゃんというチンパンジーも出てきて、見ているだけで癒されますよ。

二人のアンドロイドによる物語

単行本「ミルキーウェイ」のなかには、『ミルキーウェイ』の他、短編漫画が収録されています。

とくにジャックがエレナと出逢う前にエルという人間の女性に恋をする『メタルと花嫁』は、切ないです。

そして『ミルキーウェイ』は、ジャックがエルと別れてから170年後の話です。

自殺をしようとしていたエレナと出逢ったジャック。

エレナの以前つかえていた天竜という男性にそっくりなジャックを見て、やたらとなついてくるようになります。

ここから何年も生き続けるジャックのエレナの物語は始まるのです。

その他に収録されている作品も、「これはどういうこと?」と思ってしまうような設定の物語や切なくて胸にグッとくるものばかり。

『竜の眠る星』のパロディ的な物語も入っているので、合わせて読んでおくとさらに楽しめるかもしれません。

圧倒的美しさと強烈なキャラクター

何はともあれ、美しいです。

とくにエレナは性別のないアンドロイドのため、中性的な顔立ちで本当にきれい。

しかし性格がかなりおかしい。

もしこんな人間がいたら近づきたくない!

子どもがそのまま大人の姿をしているようなイメージでしょうか。

それに翻弄されつつも、しっかりとフォローしていくジャック。

ふたりの絶妙なコンビネーションと、ジャックの困惑気味な対応が作品におもしろみをプラスしています。

懐かしい少女漫画で、今の自分を知れた

私は結婚をする際に、大量の漫画や小説を処分してしまいました。

ここに紹介した漫画はすべて持っていたのですが、そのいくつかは手元から無くなってしまったのです。

正直、かなり後悔しました。

そのためこの記事を書く際に、再度ネットで注文して読んでみたのですが、今読むと違った解釈が生まれるんですよね。

もちろん公衆電話が出てきたり、服装が時代にそぐわなかったりといろいろありますが、物語に息づく心に響く要素は、時代を超えます。

読んだ時に感じた感想や見えた景色だけではなく、今だからこそ生まれる解釈や感動がありました。

正直なところ「懐かしい少女漫画を読む=昔を懐かしむ」というイメージがあり、苦手でした。

しかし実際にやってみると、どれくらい自分が大人になり、子どもの部分も残しているのかを知るバロメーターになります。

夏野久万
夏野久万

大好きだった少女漫画を読むことで、自分自身の心の位置が分かるのです。

たまには、懐かしい少女漫画を読んで自分と向き合う時間を持ってみてはいかがでしょうか。

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夏野久万

夏野久万

フリーライター。冊子や新聞のほか、恋愛記事、書評、ビジネス系記事まで幅広く執筆。最近、小坂やささやかな階段沿いに古い建物を見てきゅんきゅんしてしまう自分に気づく「懐かしいもの」好き。幼い頃は、バービー人形でよく遊ぶ。男役欲しさに、親せきにもらった人形の髪の毛を切ってしまい親から怒られたことも(のちに某鑑定系番組で、それなりの値がついていた人形と判明)。枝豆、ソイラテ、ミックスナッツをこよなく愛する。
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