平塚児童センターの裏にひっそりと佇む店構え、小さな入り口からは想像もできない工夫やアイディア、店主のこだわりが詰まっている「駄菓子ミチクサ」。
ここは前回の井本商店を取材中に常連の中学生たちが教えてくれ、Googleマップに手書きの赤丸印をつけてくれた場所です。
地元の方たちならではの情報により行くことができ、また一つ新しいドアを叩くことができました。
さて、今回はどんな店主さんがいるのかな、きっと素敵なお店なんだろうなという気持ちを抱きながら「こんにちは」とドアを叩きました。
入り口にはこの時期ならではのサンタクロースの衣装を着たぬいぐるみが出迎えてくれています。
駄菓子問屋から駄菓子屋へ
創業は2015年、店主・梶原さんにとってこのお店を開店したのは自然の流れだったと言います。
ご両親は駄菓子の問屋で、当時はあられやお煎餅を手作りして卸していたのが始まりだそう。
そこからだんだんと種類も増えていき、梶原さんのお兄さん、お姉さんのご主人とで問屋をやっていましたが、2015年にお兄さんが他界。
その年に開店させたという「駄菓子ミチクサ」。
大変な年に始められたことを聞き、このお店への梶原さんの想いを感じます。
ご両親がやっていた問屋さんを家族が引き継いでいたこともあり、すんなりと入れたというこの世界。
多くを語らない店主の言葉の節々からいろいろな想いが伝わってきます。
その意思を形にしたミチクサが、どのように人々から愛されているのかを伺いました。
現在はお姉さんのご主人がやっている駄菓子問屋から毎週仕入れており、子供たちからのリクエストも考慮しながら常に新しいもの、人気のあるもの、昔ながらの商品を品揃え豊富に「家族が問屋」ならではのお店として営業されています。
お客さんが買いやすいよう、見やすいようにあらゆる場所に工夫がされているのもこのお店の魅力。
駄菓子屋ミチクサを彩る収納名人
さすが駄菓子問屋の娘、と拍手を送りたくなるような見事な収納、陳列、管理です。
陳列用の棚は大工さんにわざわざお願いして作ってもらったのだとか。
在庫は透明のプラスチックケースにわかりやすく収納してあり、営業終了後は毎回必ず出ている駄菓子を全て決まったプラスチックケースにしまいます。
陳列用の棚にはカバーを付け、衛生面、在庫状況をきちんと管理しているそうです。
こうして駄菓子ミチクサの夜は終わります。
翌日はまたケースから出し、同じ場所に陳列するという徹底管理された商品は衛生的であり、埃などとは無縁の見事というほどに整頓、管理され販売されています。
こんなにたくさんの種類を全て、各々のケースにしまうなんて面倒くさくないですか?
と誰もが想像しうる質問を投げかけてみました。
「楽しいわよ。これをしないと終われない」と言います。
ずっとそうしてきたそうで、こんなところにも梶原さんの勤勉さ、真面目さが伝わってきます。
駄菓子を見やすく、そして取りやすくするために透明のプラスチックケースに変えてみたりと、こだわりはとどまることを知らず、こうした方が見やすいのではないか、ここにあれば取りやすいのではないかと常にお客さん目線で考えている梶原さん。
「また近々大工さんに新たな棚を作ってもらうのよ」と教えてくれました。
オーダーの棚を作るということはそれ相応の費用もかかります。
そんなことよりも「全ては無駄のないスペースとお客様のために」というポリシーがここミチクサにはあるようです。
駄菓子屋ミチクサが提供する寛ぎのスペース
店内の奥を行くと突き当たりには部屋があり、ソファ、テーブル、本棚と寛ぐためのスペースが用意されています。
梶原さんのこだわりは壁紙。
美しい小鳥たちのカラフルな壁紙がこの部屋を一層華やかにします。
飾られている写真は家族が撮影したものだそうで、友達の家に遊びに来たような落ちつけるスペースとなっています。
自分で使っていた部屋を改装しサービスで提供しているそう。
改装費もさることながら自分の部屋までも差し出してしまうなんて普通ではできないこと。
こんなところにも細やかな気配りが感じられます。
アナログが一番、大事なノート
販売方法にもこだわりがあり、来客時の常連さんの名前、何を買ったか、いくらだったかを全てノートに記載しています。
これで本日の売り上げ、月の売り上げ、年間と一目瞭然でわかります。
デジタルの時代だからこそノートにメモをすることへの大切さは共感です。
今、大ベストセラーの本「メモの魔力」の著者、前田祐二さんは幼い頃から成功を夢見て、まさに血の滲むような努力をしてきましたが、その横には大量のメモを残したノートがあります。
この本を読んでいたので、ふと“梶原さんの努力と前田さんのやり方は似ている”と思い浮かびました。
“地道な努力に勝るものはなし”
成功とはこれに尽きるのではないでしょうか。
一日一字を記さば
一年にして三百六十字を得、
一夜一時を怠らば、
百歳の間三万六千時を失う。
吉田松陰(幕末の長州藩士、思想家、明治維新の精神的指導者 / 1830~1859)
この詩からいつの時代も書き記すことが大切なのだと教えられます。
ここで一句、
ノートの思い出といえば、そうです、あれですね。
授業中 パラパラマンガ 書き記す
受験生のみなさん、だめですよ、これはいけません。
迷い猫、飼い主さんを探しています
取材中に「この迷い猫の飼い主さんを探しています」という方が訪ねてきました。
首輪をつけた猫が迷子になっているといいます。犬を飼っている筆者にとってこれは他人事ではありません。
多少なりともお役に立ちたいと思い、ここにその時持っていた“迷い猫探しています”の用紙とともに詳細を記載させていただきます。
何か情報がありましたらTwitter・Instagramのどちらかにご連絡ください。
※見つけた地域:品川区平塚1丁目周辺 最初に見つけた時期:2019年10月9日頃 首輪の色:紫色 |
早く、飼い主さんのところに戻れますように。
大切な家族との別れは辛いです。猫であっても人間であっても家族は家族。
2015年、大事な家族を失った梶原さん、そんな大変な年に始めた駄菓子ミチクサ。
梶原さんの思いや優しさは見えない駄菓子の「おまけ」として詰まっていることでしょう。
帰り際、いつも心の中で呟いています。
店主には感謝の気持ちとエールを。
まだまだ駄菓子屋としては新しいお店です。
「がんばってください」とそっとドアを閉めた聖地巡礼第4弾。
そこは、努力と無償の愛が詰まったお店でした。
【基本情報】 駄菓子ミチクサ 住所:東京都品川区平塚2-4-8 連絡先:03-3781-7987 営業時間:14時〜17時 定休日:不定休(基本毎日営業) |
お店の隅々まで店主さんの工夫が行き届いているわ!
これからも地域の寛ぎの場として元気に営業してほしい。
ゆきこ ロッシ
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